過労死で労災認定を受けた企業の公表を求め提訴に至りました。
—ここから毎日新聞社記事を引用(記事本文はこちら)—
過労死や過労による病気で従業員が労災認定を受けた企業名を大阪労働局が公開しなかったのは違法として、夫(当時49歳)を過労自殺で亡くした京都市伏見区のAさん(60)が18日、開示を求める訴えを大阪地裁に起こした。原告弁護団によると「過労死」を起こした企業名の公表を求める訴訟は全国で初めて。
訴状によると、Aさんは3月、02年度以降に従業員が過労で死亡したり病気になり、労災認定を受けた企業名を情報公開請求。しかし「個人の特定につながる」として開示されなかった。Aさん側は「個人特定の危険性はなく、情報公開法に違反する。労災認定が職場環境改善につながっておらず、再発防止には企業名を公表し監視する必要がある」と訴える。
Aさんの夫は飲食店店長だったが96年、飛び降り自殺し過労が原因として労災認定を受けた。Aさんは提訴後「労働者の命よりも企業の利益を守っている。企業名の公表は(労働者が)会社を選ぶ情報になる」とコメントした。また過労死や過労自殺の遺族らでつくる「全国過労死を考える家族の会」と過労死弁護団全国連絡会議は18日、長妻昭厚生労働相に精神障害になったり自殺した場合の労災認定基準の見直しや、過労死・過労自殺を出した企業名の公表を求めた。
—毎日新聞記事引用はここまで—
昨年の10月に「過労死どう防ぐ」というテーマで日経産業新聞でコメントさせていただきましたが、過労死や過労により重篤な障害を負うケースが出てしまうと、会社は多額の損害賠償(民事上)を支払うことになり、まず金銭面で大きな損失を被ることになります。
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長期研修のストレスを原因として過労死の労災認定
また、会社に与えるイメージは相当なもので、いわゆる即「ブラック企業」へ名を連ねることになりかねません。そうなれば、良い人材は間違いなく来なくなる。会社に在籍する「社員(=人)」こそが、今後の会社発展にはますます重要となるであろうこの時代に、戦力となる「優秀な人材」が来なくなればその行く末は見えています。場合によっては、即一発倒産に繋がるということを経営者の方々は認識しておかねばならない時代であると思います。
過労死という言葉は近年になってできた言葉で、日本が発祥の地です。つまり勤勉実直な日本人ですから、過労死という問題は諸外国では起きていない日本特有のものなのです。しかしながら、言葉が存在する以前からこうした問題は起きていたと推測します。60年、70年代は突然死というものは存在していました。泣き寝入りに終わっていた人達も当然いて、決して今に始まったことではないと私は思っています。
流れが変わってきたのは、2001年の労災認定基準が見直されて以降ではないでしょうか。基準の見直しによって、過労死認定がされやすくなってきています。昔は埋もれてしまっていたこうした問題が、ようやく表に出て問題視されるようになってきた訳です。この背景には、情報社会による情報スピードや情報量が影響し、労働者側も知識を得やすくなった=成熟してきていることにあります。そのため、過労死絡み・精神疾患関係と労災認定の結びつきは今後も加速していくことになるでしょう。
こうした報道は、なかなか身近な問題として捉えにくいところがあります。うちに限っては大丈夫だろう・・・こうした意識がとても危険です。社員の命に関わる問題だけに、大切な家族に万が一のことがあれば・・・常識で考えて、前述したような知識も備わっていれば誰でも訴え出ることになるでしょう。極論ですが、明日は我が身・・・ぐらいの危機感を持って経営された方が職場の問題点を洗い出す目を持つことに繋がると思うのです。
過労死問題は起きてからではもはや手遅れです。事前対策こそが大切なのです。時間外労働はどうなっているでしょう・・・月45時間を超えた残業が発生していませんか?職場における人間関係はどうでしょう・・・上司・部下の関係は?職場の風通しは良いですか?まずは、明日から再度把握してみませんか?その行動こそが、トラブルから会社を守る第一歩です。それは、社員のためであり、会社のためでもあります。
長時間残業が、休日出勤が、漫然と当たり前のように行われている会社は、まさにいま今後の対応が求められています。