「収入」と「所得」の違いって?

労務管理

はじめに

一般の方々からすると、両者の違いなど、そんなこと知ったことではありませんよね。しかし、実務的には「収入」と「所得」、この両者が持つ意味合いは全く異なります。年末調整の時期に差し掛かると、この辺りの質問をよく受けます。今回は、会社員の方を念頭にここで整理をしてみたいと思います。

「収入」とは?

ざっくり言うと、「収入」とは、社会保険料や税金が引かれる前の金額と捉えておけば、大きく違いません。例えば、会社にお勤めの方(以下、本稿では「会社員」といいます)の場合、給与明細書に記載されている中の「課税合計」や「課税支給額」といった欄に記載された金額を指します。

「所得」とは?

これに対して、「所得」は、「収入」から「必要経費」を差し引いたものを指します。この残った額(=所得)に対して、所得税や住民税といった税金がかかります。

収入 - 必要経費 = 所得

会社員の場合、この「必要経費」にあたる部分が「給与所得控除」と呼ばれるものです。会社員の方々も、仕事のためにスーツを購入したり、お化粧品を購入したりと、様々な経費が掛かりますよね。これらについて、給与等の収入額に応じて、国があらかじめ計算式を決めてくれてある訳です。これが「給与所得控除(=会社員の必要経費)」と呼ばれるものです。具体的には、下記の国税庁のホームページ(給与所得控除)で確認することができます。

No.1410 給与所得控除(国税庁ホームページ)

具体例

では、年間の給与収入が400万円であった場合を考えてみましょう!
先で示した国税庁のホームページに掲載されている計算式を確認すると、「3,600,000円超、6,600,000円以下」の給与所得控除額の計算式は「収入金額×20%+540,000円」とあります。これに当てはめると、必要経費は134万円(=4,000,000×20%+540,000)であることがわかります。

以上を整理すると、

収入4,000,000円ー必要経費1,340,000円=所得2,660,000円

となります(上記具体例は「平成29年分~令和元年分において使用する給与所得控除表」に基づき計算)。

会社員の方は、年間の給与収入が400万円であった場合、134万円分は必要経費として認められ、収入から差し引くことができるという訳です。実際これだけの必要経費はかかっていないという方、あるいは、これ以上に必要経費がかかっているという方、双方いるかもしれません。しかし、会社員の場合は、実際の経費がどうかは関係なく、年間の給与収入額が確定すれば、「給与所得控除額」という計算式に当てはめることによって必要経費が自動的に算出されるという点がポイントです。

まとめると・・・

収入4,000,000円
所得2,660,000円
差額1,340,000円・・・必要経費(給与所得控除)

このように、「収入」と「所得」は、明確に区別して考えなければなりません。両者は、見ている場面が異なるからですね。そのため、実務的には「収入」ベースなのか、「所得」ベースでの話なのかを明確にしておかなければ、結論も変わってきてしまうのです。


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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