給与+α
社員の給与を決める際、忘れてはいけないのが「法定福利費」です。法定福利費には、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、労災保険料、一般拠出金、雇用保険料、子ども・子育て拠出金があり、会社が負担すべき部分として法律で決められたものです。そのため、社員の給与を30万円と決めた場合、30万円+“法定福利費”が毎月かかってくる訳です。単に30万円の給与部分の負担だけではないということです。
資金計画を立てる際、家賃や水道光熱費、仕入れ額等々については、緻密に計上されているのに対し、給与を含め法定福利費部分の予算計上が曖昧になっているケースが見受けられます。特に創業時の場合に多くみられる傾向ですが、無理もないと思います。創業間近、創業してすぐの時は、あらゆる物事が手探りのはずですから。ただ、毎月会社が負担する固定費のなかでも、人件費は多くの割合を占め、無視できない費用であることは間違いありません。予算計画において、社員に支払う給与だけにとらわれていると、費用倒れに陥ってしまいます。
そうならないよう、今回は法定福利費として、どの程度を見込んでおけばよいかについて、整理してみたいと思います。
公的保険制度の料率一覧
- 単位:1,000分の1
- 2022年10月1日時点
公的保険制度の種類 | 会社負担分 | 労働者負担分 | |
労災保険 注1 | 3~62 | なし | |
一般拠出金 | 0.02 | なし | |
雇用保険 | 一般 | 8.5 | 5 |
農林水産業・清酒製造業 | 9.5 | 6 | |
建設業 | 10.5 | 6 | |
健康保険(東京都) 注2 | 49.05 | 49.05 | |
介護保険 注3 | 8.2 | 8.2 | |
厚生年金保険 | 91.5 | 91.5 | |
子ども・子育て拠出金 | 3.6 | なし | |
合計 注4 | 163.87~224.87 | 153.75 |
注意1~4について
- 主たる事業の危険度に応じて料率が設定されているため、最低と最大の労災保険率を掲載しています。
- 保険者が「協会けんぽ」である場合、都道府県ごとに料率が異なります。表中は東京都の場合を掲載。また、健康保険組合である場合は、組合ごとに料率は異なります。
- 介護保険は、40歳以上64歳までの被保険者が対象。65歳以上の被保険者は、原則として年金から控除されるため、給与控除の対象から外れます。
- 表中の合計は、労災保険率・雇用保険率に幅があることから、最大と最低を示した料率合計(介護保険を含む)です。
一例
料率だけでは今一つイメージがわかないと思いますので、実際に数字で確認することにしましょう。
・月給30万円
・夏季、冬季賞与として各々35万円支給。
・年齢40歳
・サービス業(一般の事業)
公的保険の種類 | 会社負担分 | ||
給与 | 夏季賞与 | 冬季賞与 | |
労災保険 | 900円 | 1,050円 | 1,050円 |
一般拠出金 | 6円 | 7円 | 7円 |
雇用保険 | 2,550円 | 2,975円 | 2,975円 |
健康保険 | 14,715円 | 17,167円 | 17,167円 |
介護保険 | 2,460円 | 2,870円 | 2,870円 |
厚生年金保険 | 27,450円 | 32,025円 | 32,025円 |
子ども・子育て拠出金 | 1,080円 | 1,260円 | 1,260円 |
合計 | 49,161円 | 57,354円 | 57,354円 |
年間 | 704,640円 |
毎月30万円の給与と、夏・冬の賞与を合計すると、年収430万円になります。これに対して、かかってくる法定福利費の概算は、一人あたり年間704,640円ということがわかります。料率一覧で示した通り、最低でも約17%は別途負担が生じることがわかりますね。
まとめ
以上のように、法定福利費だけを捉えても、給与とは別に最低でも約17%~最大で23%を見積もっておく必要のあることが解ります。仮に30万円の給与を支払うと決めたら、別途1か月あたり、50,000円~70,000円の法定福利費を見込んでおかなければならないということです。また、募集・採用にかけた諸費用をはじめ、定期健康診断(業種によっては特殊健康診断費用も含む)等々、雇用する際にかかる費用は、所定内給与の1.2倍~1.8倍にまでのぼるとも言われます。
総額人経費の予算を考慮する際は、この辺りもきちんと把握して計画を立てることが肝要です。ご参考ください。