労災障害認定「等級差は男女差別にあたる」違憲

以前からこの取り扱いには少し違和感を持っていました。

業務災害によって「顔」に怪我を負った結果、その顔に傷などが残ってしまった場合の障害補償給付の取り扱いが、男女間で違うというのは、社労士受験生向けの内容だったり、企業における労災保険制度関係の講演などで私はよくお話をさせていただきます。大体、「え~!何で~!?」と興味を持っていただき、盛り上がる場だったりします。

労災保険の障害補償給付は、第1級~第14級という14段階で区分されています。

このうち、第1級~第7級までは年金支給。つまり、障害状態に該当する限りは年金が支払われ続けます。一方、第8級~第14級までは一時金支給。つまり、文字通り1回お金が支給されてしまったらそれで終わりということです(下表参照)。

ちなみに、一時金に該当する第8級~第14級は、障害を負ってはいるものの社会復帰できたり、障害状態にあることがパッと見たところではわかりづらいものが該当します。と大雑把ですが、このようにわかれている中で、同じ程度の顔の火傷による傷であっても、

  • 女性の場合は年金支給(今回のケースでは第5級に該当)
  • 男性の場合は一時金支給(今回の男性Aさんは第11級と認定された)

この等級差は補償額にダイレクトに反映されます。

年金等級支給額日額10,000円
とした場合
第1級給付基礎日額×313日313万円
第2級給付基礎日額×277日277万円
第3級給付基礎日額×245日245万円
第4級給付基礎日額×213日213万円
第5級給付基礎日額×184日184万円
第6級給付基礎日額×156日156万円
第7級給付基礎日額×131日131万円

 

一時金等級支給額日額10,000円
とした場合
第8級給付基礎日額×503日503万円
第9級給付基礎日額×391日391万円
第10級給付基礎日額×302日302万円
第11級給付基礎日額×223日223万円
第12級給付基礎日額×156日156万円
第13級給付基礎日額×101日101万円
第14級給付基礎日額×56日56万円

これは「女性は顔が命」という言葉が存在するように、顔に気を遣う女性は男性よりも多く存在しているし、もし傷が残った場合の精神的なショックは、男性よりも上回る・・・という一般的な常識論が根拠となっているようですが、確かにこれは男女差別といわれても仕方ない取り扱いではないかと思います。

今は、男性でも女性と同じように顔を気遣い手入れをする人がいます(逆に女性でも、まったく気を遣わずに全然…という人もいますが…汗)。男性のエステも存在するほどですもんね。当然、男性が女性と同程度あるいはそれ以上のショックを受ける人がいるということが考えられるでしょう。顔に傷が残り、それを受け入れる悲しみ・痛み・ショックの度合いは、男であれ女であれ辛いものです。一律に男はこう!女はこう!と画一的に区切ること自体がおかしいのではないでしょうか。

今回、初めて労災認定の際の障害等級の取り扱いが憲法14条の平等原則に違憲であるという判決が出された訳ですが、色々な意味で価値観や物の考え方が多様化してきている世の中なので、労災認定におけるこの男女差の取り扱い自体が時代にそぐわないものになってきていることは確かです。

私は、今後の労災の障害認定の有り方を考えていくうえで一石を投じる意義ある良い判決だったと思います。


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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