2か月以内の雇用契約期間設定者の社会保険加入の取扱い(変更)

社会保険

社会保険の加入を2か月遅らせる!?

社会保険料の法定福利費は重い。だから、採用してもすぐに辞めてしまうかもしれないから社会保険の加入を遅らせたい。そう考えて、初回の採用時段階では形式的に2か月以内の雇用契約を締結し、この間は社会保険料に加入しないということをしてきた会社がありました。いわゆる法律で適用除外に規定されている「臨時に使用される者」を逆手にとったやり方です。よほど悪質な場合を除いて、これが即違法であるとまでは言えませんが、なかなか黒に近いグレーなものであったことは確かです。

健康保険法 第3条(定義)

この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。
①船員保険の被保険者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第二条第二項に規定する疾病任意継続被保険者を除く。)
臨時に使用される者であって、次に掲げるもの(イに掲げる者にあっては一月を超え、ロに掲げる者にあってはロに掲げる所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く。)
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
以下、略

厚生年金保険法 第12条(適用除外)

次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
②所在地が一定しない事業所に使用される者
③季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して四月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
④臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して六月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
以下、略

2022.10月からはNG(変更)

各法律で除いている本来の趣旨は、文字通り2か月という短期の雇用契約で本当に終了する場合を想定したものです。2か月以内といった短い期間で雇用関係が終了するのであれば、会社も本人も手続的にお互い大変だし、この場合は加入させなくてもいいですよ!といった感じでしょうか。

でも実際は、冒頭で示した通り、そうではないんですよね。最初から長期雇用を前提として雇用契約するつもりでいるものの、法定福利費の負担を遅らせる、長く続くかわからないから様子見の間は社会保険に加入させたくないといった理由で、まずは2か月の有期雇用契約を締結している訳です。そうなると、実態としては採用当初の時点から、長期間にわたって継続的に使用する見込みがある訳ですから、最初から社会保険に加入させなければなりません。あくまでも、雇用契約の実態で判断するからです。

とはいえ、この辺りの事務取扱いが曖昧とされてきたことも事実です。これをキチンと線引きして明確な事務取扱いにしましょう!というのが今回の変更です。もう一歩踏み込んで言えば、先で述べたようなグレーな事務処理をしてきた会社に対して、行政側が網を掛けたということです。

具体的には、採用当初に2か月以内の期間を定めて雇用契約締結をしたとしても、期間満了時に「更新する」・「更新することがありうる」といった内容が雇用契約書や就業規則に明示されており、引き続き雇用する予定である場合には、最初の採用日の時点(2か月の雇用契約満了日の翌日ではない)で社会保険に加入手続きしなければならないこととされました。2022年10月1日からの適用です。

注意

「2か月以内の期間を定めて使用される者」という適用除外規定がなくなる訳ではありません。今回の事務取扱いの変更点は、最初から長期雇用を前提とした予定であるのに、わざわざ形の上では2か月以内の雇用契約期間を設け、この期間満了後に社会保険に加入する手法に待ったがかけられたということです。

人手不足から一時的にとか、短期プロジェクトの一環から、2か月以内の期間を定めて雇用し、その期間満了日をもって雇用契約関係が終了(更新なし)するような場合は、本来の適用除外規定の趣旨に反しないため、このような方については、これまで通り社会保険には加入できないことになります。

参考

 

あわせてチェック


佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

関連記事

おすすめ記事

TOP
CLOSE