今月は「外国人労働者問題啓発月間」です

労務管理

はじめに

例年だと毎年6月が「外国人労働問題啓発月間」に指定され、行政(厚生労働省・都道府県労働局・各ハローワーク)から私たちに様々な周知・啓発がされています。新型コロナウイルスの影響もあり、今回は、11月がその啓発月間とされています。

ここ数年間をみていると、個人的には、中小企業を含め、日本国内で働かれる外国人の方が多くなったなという印象を受けています。日本人を採用する場合と比較すると、外国籍の方を雇用する場合には一部取り扱いが異なりますし、採用前に確認しなければならない事項があります。

ちょうど今月が行政の周知・啓発月間にあたることから、この点の概要について、確認しておきたいと思います。

どんな内容を届け出る必要があるか

外国人を採用した場合、次の8つの事項を、会社管轄のハローワークへ届け出る必要があります。

    1. 氏名
    2. 在留資格
    3. 在留期間
    4. 生年月日
    5. 性別
    6. 国籍・地域
    7. 資格外活動許可の有無
    8. 在留カードの番号(2020年3月1日以降採用から)

外国人採用の場合に気をつけたいポイント

これを踏まえ、外国人を採用する場合に設けられているポイントを確認しておきましょう。

採用時・退職時の届出

一部の例外を除き、外国人の方を採用したり、あるいは外国人の方が退職される場合、会社はハローワークに上述した1~8の内容を届け出る必要があります。これは、在留資格の確認を行い、あらかじめ不法就労を防止する観点で設けられています。

この届出は、雇用保険に加入する際にハローワークに出す「雇用保険被保険者資格取得届」の中に記入する箇所があるため、基本的に雇用保険に加入する外国人労働者である場合は、届出漏れということは少ないと考えられます。

そのため、問題となるのは、雇用保険の加入基準を満たさない外国人の方々です。短時間のアルバイトで雇用契約した場合が一般的なケースとして想定されます。この場合にも、同様に届出をしなければなりません。しかし、それを知らずに届出漏れ…というケースがありますので、十分に注意しておきたい点です。

雇用保険に加入しない外国人の方を採用したり、あるいは、その方が退職された場合は、都度、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を使用して、届け出ることになっています。いま一度、外国人を雇用されている会社の総務担当の方々は、短時間の外国人労働者について、自社の届け出漏れがないか確認する機会とされることをお勧めします。

外国人に係る届出様式について(厚生労働省ホームページ)

人事・労務管理について

外国人だからといって、日本人と変わることはありません。国内で雇用される場合、日本人と同じく労働法が適用されます。法律で定められた基準に該当すれば、日本人と同じく社会保険や雇用保険には加入手続きをしなければなりません。最低賃金法も適用されます。時間外労働等を命じた場合は、割増賃金を支払う必要があるのです。

ごく稀ではありますが、日本人ではないから…という理由だけで、これらが適用されないと勘違いされている経営者の方がいますが、日本人を採用する場合と労務管理は基本的に変わらないと考えておきましょう。

静岡労働局のサイトに「外国人労働者の雇用管理改善等に係る自主点検表」が公開されています。こうしたツールを活用し、いま一度、問題がないか確認されることをお勧めします。

外国人労働者の雇用管理改善等に係る自主点検表(静岡労働局)

まとめ

一番大切なポイントは、自社において「不法就労に陥らないこと」だと考えます。まずは、採用前の段階で、出入国管理庁から働く許可を受けているのか?、認められている範囲を超えていないか?在留カードを通じ、よく確認しておくことが大切です。

なぜなら、不法就労者のみならず、この点の確認を怠った会社も処罰対象(☆)になるからです。ついうっかり忘れて会社が在留カードを確認しなかったような場合も処罰は免れず、非常に厳しい取り扱いになっています。

そして何よりも、処罰を受けるのみならず、会社の社会的な信用失墜、ブランド価値の低下等々により、中小企業は企業経営そのものに影響することも想定されます。会社にとっては、大きな労務リスクに繋がる点ですので、十分に注意しましょう。

☆について
不法就労させたり、不法就労をあっせんした場合(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)。ハローワークに外国人の届け出をしなかった場合や虚偽報告した場合(30万円以下の罰金)等。

佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

関連記事

おすすめ記事

TOP
CLOSE