社会保険とは「健康保険」と「厚生年金保険」の二つを合わせた総称です。今回は、この社会保険の加入基準についてお伝えしたいと思います。社会保険は「正社員の制度」と誤解されているケースも見受けられますが、そうではありません。もちろん正社員は加入対象ですが、パートやアルバイトといった職種で雇用されている方であっても、次の基準を満たす場合は、社会保険に加入しなければいけないことになっています。
社会保険は、最低でも5年に1度は管轄年金事務所において、調査が実施されています。加入基準を満たす働き方をしているにも関わらず、パート・アルバイトという理由だけで手続きをしていないと、指導対象となり、遡及して加入しなければならない場合もありますので、十分に注意しておきたい点です。
原則:4分の3基準(被保険者数101人未満の場合)
社会保険の加入可否は、貴社の正社員の働き方をベースとして考えます。つまり正社員の、
①1週間の勤務時間数
②1か月の勤務日数
といった①・②の2点が4分の3以上あれば、社会保険に加入しなければなりません。これが、いわゆる「社会保険の4分の3基準」と呼ばれるものです。この①・②双方の基準に該当する場合は、正社員ではなくても、社会保険に加入する必要があります。繰り返しになりますが、パートやアルバイトという理由で、社会保険は関係ないという訳ではないため注意しましょう。
上記①・②について
①と②の双方を満たす働き方をする場合、会社管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金 被保険者資格取得届」を届け出る必要があります。他方で、①又は②のいずれかを満たさない場合は、社会保険の加入基準を満たさないことから、加入することができません。
すなわち、1日8時間で週5日勤務、1か月の平均稼働日数が22日の会社と仮定して考えると、
①正社員40時間×3/4=30時間以上
②正社員22日×3/4≒17日以上
となることから、「①週30時間以上」+「②1か月17日以上」勤務している場合は、パート・アルバイトという職種であっても、社会保険の加入対象となる訳です。これらをまとめると、下表の通りになります。
ケース | ①正社員の1週間の勤務時間数×4分の3以上 例)正社員40時間×3/4=30時間以上 | ②正社員の1か月の勤務日数×4分の3以上 例)正社員22日×3/4≒17日以上 | 社会保険への加入可否 |
A | 満たす | 満たす | 強制加入 |
B | 満たす | 満たさない | 加入できない |
C | 満たさない | 満たす | 加入できない |
D | 満たさない | 満たさない | 加入できない |
例外:4分の3基準を使わない場合
法人全体の被保険者数が常時501人101人以上の会社か、被保険者数が501人101人以下で労使合意した会社(勤務している人達の半分以上+会社の合意)に勤務している場合は、先の「原則:4分の3基準」ではなく、次の4つの基準をすべて満たすと社会保険の加入対象となります。すなわち、原則(4分の3基準)よりも、加入対象の裾野が広げられています。
① 1週間の所定勤務時間数が20時間以上であること。
② 1年以上の2か月を超えて雇用期間が見込まれていること。
③ 給与月額が88,000円以上あること。
④ 学生ではないこと。
届出期限、様式
加入基準に該当する方を雇用する場合、忘れずに届出をしておかないといけません。届出忘れがあると、健康保険の保険給付や、老後の年金(他にも障害年金・遺族年金)にも影響が生じ、労使トラブルになることも考えられます。次のように決まっていますので、忘れずに届け出るようにしましょう。
- 事実発生から5日以内
- 「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」(日本年金機構ホームページ)
変更履歴
- 2022年10月1日の法改正により一部修正(2022.10.28更新)