アルバイトにも過労による労災認定が・・・変わってきています

長時間労働や過重労働が原因で、過労死に至り労災認定された事案を本ブログでいくつか取り上げてきましたが、今回も労災認定事案です。いつもと違うのは、被災者が非正規社員であるアルバイトということ。

—ここから毎日新聞社記事を引用(記事本文はこちら)—

月160時間を超える残業をしていた神奈川県在住の元コンビニエンスストアのアルバイト男性(42)が、過重労働が原因で統合失調症を発症したとして労働災害が認定されたことが分かった。長時間・過重労働などを原因とする過労死、過労自殺の労災認定は、増加傾向にあるが、アルバイトなど非正規雇用労働者の過労労災認定は珍しい。長時間労働が正社員だけではなく、非正規まで広がっていることを浮き彫りにした。
申告を受けた労基署は、05年の3月や10月などに月間160時間を超える残業をしている事実をレシートの記録などから確認、「恒常的な長時間労働があり、精神的負荷が強くかかった」ことを原因に統合失調症を発症したとして業務上の災害と認定した。認定は今年9月。
認定では、男性は05年12月以前に発症したとされ、発症から2年近く症状を抱えたまま働いていたことになる。
男性の労働時間を記録したメモによると、この間、月に350~529時間働いていた。ほとんど、店に寝泊まりして働く状態で、賃金は30万円の固定給与だったという。

—毎日新聞記事引用はここまで—

月の残業が160時間は異常です。月20日勤務とした場合、普通に1日で、法定労働時間を2回繰り返している計算になります。そもそも、私は原則として1日に2時間を超えてしまうような残業が毎回発生してしまうのはおかしいと思っています。その昔は「残業こそ美学」とされてきた時代もあったでしょうが、今は違います。業態そのものが変化していて、労働時間が長ければ生産量も上がるかといえば必ずしもそうではありません。

この場合は、残業の発生原因を調べるべきです。仕事量が1人の人間だけに負荷がかかっているのか、そもそも、担当している労働者にその仕事の処理能力がない(ミスマッチ)なのか?を見極める必要があるのです。なぜなら、長時間労働は、会社にとっても、そこに働く社員にとっても双方に何のメリットもないからです。
今回のケースは予想するに前者。明らかに1人の人間に仕事量が集中していたのではないかと・・・。

労災認定された「統合失調症」は、精神疾患の一つとされていて、妄想や幻覚を見てしまうなどの症状があるようです。精神疾患に係る労災認定は、本年4月に基準が10年ぶりに見直されました。こうした影響から私は、「労災認定のあり方」が確実に変化してきていると感じています。

仕事量の変化における着眼点(勤務時間中はいつも仕事に追われる状況になった等)が、より詳細になっていますし、非正規社員であることの理由等によって、仕事上の差別、不利益取り扱いを受けたなどの項目も付け加わりました。新たに12項目が加わり、43項目の構成になっています。これまでの基準では、非正規までのことを考慮して策定されていなかったように感じますが、非正規社員の占める割合が増えたこともあり、この辺りも考慮した作りとなっている印象を受けます。

アルバイトの過労による労災認定が珍しいとはいえ、非正規であっても、認定基準が詳細に設定されたことによって、より具体的に判断できるようになったので、今後はアルバイト等の非正規社員であっても、精神疾患等による労災認定の事案は増えてくると思われます。

アルバイトと長時間労働の結びつきは意外な感じがするかもしれませんが、不測の事態に備え、雇用の調整弁として、企業はこれまで正社員から非正規社員へシフトしている経緯があります。しかし、その一方で、非正規であっても、仕事の内容は正社員とほぼ同じであったりという現実があります。従来のような、パート・アルバイトだから「その時間だけ限定的に働く」というような勤務形態を採っているところばかりではない気がしますね。

会社の対策としては、冒頭で述べたように、まずは「現状把握」です。残業に陥るケースとしては、主に次の2点が考えられます。

  1. 人手不足なのに仕事があり過ぎる
  2. 担当している人間の能力不足による業務の遅延

長時間残業が恒常的に発生している会社は、まずどちらに該当しているかを見極めましょう。仕事を進める上で非効率なところはないか?あるいは残業をしていても、その残業は、その日に行うべきものであったか等も含めて検討するのです。「事業仕分け」ならぬ「仕事仕分け」ですね!なぜこんなことを言うのかというと、会社は労働者の時間管理をする義務を負っています。こうした問題が起こると、被災者又はその家族からの慰謝料を含め、会社に対するイメージ・金銭・時間的損失ははかりしえないからです。

あと、一番良いのは、担当している社員や、担当部署に直接聞いてしまうのも手です。ざっくばらんに「どう?」と。改善提案をさせるのです。担当している人間が1番よく知っているのですから。実はこれ一石二鳥です。まず、残業恒常化の原因が探れるし、提案をさせることで社員は仕事をしながら考えることをします。考えて動く、つまり「社員の育成」にも繋がるんですね。
長時間労働のない職場環境を目指し、生産効率の良い会社作りをしていきましょう!


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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