「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」について

助成金

もうご存知の方も多いかもしれませんが、先日7日に「休業支援金・給付金」についての詳細が、ようやく厚生労働省から発表されました。今回は、この制度の位置づけと、問題点について考えてみたいと思います。

新たな給付制度について

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
厚生労働省ホームページ

制度の概要や詳細は、上記に掲載している厚労省サイトのリンクに詳しく掲載されています。そのため、ここでは割愛したいと思います。

しかし、まず今回新たに出された「休業支援金・給付金」と、これまで繰り返し、拡充・緩和されてきた「雇用調整助成金」や「緊急雇用安定助成金」と、どう違うのかという点は確認しておきたいと思います。両者は、請求主体(給付を受ける人)の違いにあります。

つまり、今回の「休業支援金・給付金」は、労働者個人が直接国に請求して給付を受けるものに対し、「雇用調整助成金」や「緊急雇用安定助成金」は、会社が国に請求して給付を受けるものです。まとめると下表のようになります。

制度対象者請求者は誰か給付を受けるのは誰か
雇用調整助成金雇用保険に加入している被保険者企業
緊急雇用安定助成金雇用保険に加入していない人企業
休業支援金・給付金中小企業に雇用される労働者(※雇用保険の加入有無は問わず)左記に記載する労働者本人

本来は、今回の新型コロナウイルス感染症によって会社が休業指示を出した場合、会社は労働者に対し、労働基準法に規定する「休業手当(平均賃金の60%以上)」を支払う必要があります。ところが、何らかの理由によって、会社から休業手当が支払われることなく、休業状態にある方々がいることが問題視されてきました。こうした方々を救済する枠組みとして新たに創設されたのが今回の「休業支援金・給付金」です。

不公平感は否めない

新たな制度が創設されたことで、救済される枠組みができたことは良いことです。しかし、この新たな制度に対して、労使双方の観点から不公平感の否めない問題点が存在します。

まず会社側の視点から。

この大変な状況下においても、労基法に規定されている以上、法令遵守で何とか休業手当を支払ってきた会社からすると、新しい枠組みで直接労働者に支払われるのであれば、無理して休業手当を支払う必要なかったではないかという意見です。激しいキャッシュアウトを防ぐことだってできたという主張もあります。

雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を利用するためには、まず会社が雇用する労働者に休業手当を支払い、その後に申請をして給付される仕組みをとっています。一時的とはいえ、会社にとっては手元資金が減少する訳ですから、固定費をはじめとする他の諸々の支払いのことを考えると、大変厳しいものと言えます。日々の売り上げが立たない中で、何とか資金繰りをやり繰りしながらここまで事業を継続してきた訳ですから、当然の意見と言えるでしょう。

次に労働者側の視点から。

休業手当は平均賃金の60%以上支払えばよいことになっています。そのため、休業手当が支払われたのはいいが、通常時の給与に比べて、著しく低額になる傾向にあります。

例えば、月給250,000円の方が、会社から1か月間の休業指示を受けて休んだとします。このとき、平均賃金の60%の休業手当が支払われたとすると、おおよそ月109,000円です。ここから社会保険料や税金が控除される訳ですから、手取額はさらに低額になります。しかし、平均賃金の60%以上を休業手当として支払っていれば、会社は責めを果たしたことになるため、このケースでは問題がないということになります。実際、生活困難に陥っている労働者がいるのはこのためです。平均賃金は、原則として、実労働日数ではなく、暦日数を基に計算する仕組みであるため、単純に25万円の60%(=150,000円)とはならないのです。

しかし、この休業手当を受けている労働者は、今回の「休業支援金・給付金」は利用できません。会社から休業手当が全く支払われなかった労働者を救済する制度とされているからです。しかも「休業支援金・給付金」は、1日につき11,000円を上限として、平均賃金の80%を受給できます。さらに「休業支援金・給付金」は非課税扱いです。

すなわち、何だよ~60%水準の休業手当を支払うくらいなら、いっそのこと支払ってくれない方が良かったじゃん!!という不満を抱くことになる訳です。

まとめると下表のようになります。

休業手当
(会社から支給)
休業支援金・給付金
支給割合60%以上~会社の任意で決まる
(多くは法定通り60%相当)
80%
社会保険・雇用保険料の対象か否か保険料徴収の対象対象外
課税区分課税非課税

おわりに

手元資金が減少するなか、懸命に資金繰り対策をし、大変な思いをして、やっとのことで、平均賃金の60%水準の休業手当を工面した会社が、労働者からは「払ってもらわない方が良かった」と言われてしまう可能性があるのです。一方、休業させて給与補償を全くしてこなかった会社は、結果的にラッキーということになってしまう。

事業者としての責めを果たしているのはどちらであるのか?これを見れば一目瞭然のハズです。真面目に取り組み、苦労した会社が馬鹿をみてしまうようなことは、決してあってはならないことです。

こうした不公平な扱いは改善されるべきだし、60%水準の休業手当を受けた労働者に対しても、残りの20%部分を休業支援金・給付金で補填する等の取り扱いへと改善されることを切に願います。


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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