労災保険の加入基準について

労働保険

労働者が仕事中や通勤途中にケガを負ったり、病気に罹ったりしたら、「労働者災害補償保険(労災保険)」によって保護されます。そこで今回は、この労災保険の加入基準についてお伝えしたいと思います。

労災保険は「労働者全員」が対象です!

いきなり結論から書いてしまいましたが、雇用保険とは異なり、労災保険には加入基準がありません。例えば、労働者として1分でも働いてさえいれば、労災保険の保護対象になるのです(イメージしやすくするための例えに過ぎず、極論ではありますが・・・)。すなわち、労働者でありさえすれば全員が労災保険の対象になるということです。

ちなみに、雇用保険の加入基準は、別に掲載していますので、下記をご参照ください。

労働者とは?

では、何をもって「労働者」と判断されるのでしょうか?それは、労働基準法において、次のように定義付けがされています。

■労働基準法 第9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

■労働基準法 第11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

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つまり、
事業に使用されている。
②どのような名目で支払われたとしても、それが労働の対価として会社から支払いを受けている
上記①と②に該当する者が「労働者」に該当するということです。

労災保険に「雇用形態」は関係ない

各会社によって、雇用形態は様々だと思います。主な雇用形態を列挙すると、「正社員・パートタイマー・アルバイト・期間契約社員・派遣社員等」が挙げられます。これら、どのような雇用形態においても、先で述べた「労働者」に該当するのであれば、労災保険の対象となります。

よくある誤解として、

  • 正社員だけが労災保険を使うことができる!
  • パートタイマーやアルバイトは、労災保険を使うことができない!
  • 試用期間中は、労災保険を使うことができない!

といった声を耳にすることがあります。しかし、これらはすべて誤った情報です。

労働者が仕事中にケガをして通院する必要が生じた場合は、会社として、労災保険を使ってもらわなければいけません。なぜなら、繰り返しになりますが、労災保険を利用するにあたって、雇用形態(正社員・パート、アルバイト等)による違いはないからです。

労災保険に届出はないが・・・

雇用保険の場合は、入社した際に、労働者個々人の情報をハローワークに届け出る必要(=「雇用保険被保険者資格取得届」)がありました。しかし、労災保険は、こういった「個々人の届出」はありません。すなわち、「Aさんが入社しました」、「Bさんが入社しました」、という行政への届出自体が存在しないのです。

それでは、労災保険において、会社が注意しなければならないことはなんでしょう?

それは、「労働保険料の申告・納付手続き」です。この申告作業は、毎年1回、7月10日までに行うことになっています。具体的には、会社が労働者に対し、毎年4月~翌年3月までに支払った給与・賞与総額を申告するものです。このときに、申告書の労災保険に係る部分に、正社員をはじめ、パート・アルバイト等を含む全労働者に支払った給与・賞与総額を漏れなく計上しておかなければいけません。したがって、個別に労働者ごとの届出はありませんが、年に1度、漏れなく計上申告をすることがポイントです。代表的な誤った事務処理として、正社員のみに支払った給与総額を計上し、労災保険料として納付することです。

「労災隠し」は犯罪行為

「労働者災害補償保険」という名のとおり、労働者の業務上や通勤途上での事故は、労災保険を使うこととされています。繰り返しますが、労災保険は正社員だけの保護制度ではないということです。このような災害に対し、会社が健康保険を使うよう指示したり、労災保険を使わないように働きかけることは「労災隠し」と呼ばれます。「労災隠し」は、犯罪行為に該当し、使用者は刑法上の責任を問われる事態にも発展する重大な事柄です。労災事故は、労働者の生命・身体に直接関わる重大な事柄だからです。

昨今は、こうした事実が明るみになることで、企業の信用失墜や、ブランドき損、取引先との中止にも繋がりかねません。中小企業にとっては、最悪労務リスク倒産にも及ぶおそれのある問題だけに、十分に注意しておきたい点です。

参考


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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