運用3号問題

国民年金3号被保険者の取り扱いをめぐって問題になっています。
いわゆるサラリーマンの妻→自営業者の妻への切替手続ができていないことにより無年金扱いになっている人たちを救済する制度をめぐる問題です。

現行の年金制度は、サラリーマンの専業主婦は、国民年金の3号被保険者といって、保険料を負担することなく、国民年金に加入しているものとして扱われ、その加入期間は、年金額にも反映される仕組みになっています。

一方、同じ専業主婦であっても、自営業者の専業主婦は、国民年金の3号被保険者とはならず、1号被保険者になり毎月々国民年金保険料を納めなければ滞納期間となり年金額には反映されません。そもそも、同じ専業主婦なのに、この段階で制度がおかしいとは思うのですが、今回の「運用3号」はもっとおかしい。

サラリーマンの専業主婦だった妻が、夫が脱サラして自営業者になった場合、夫婦ともに国民年金1号被保険者になります。つまり、専業主婦の視点でみれば、3号被保険者から、1号被保険者に切替手続をしなければならない訳です。

ところが、この手続をしなかったため、国民年金の加入期間が未加入期間となってしまい、無年金者が100万人を超えて大混乱が起こることを考慮して、厚労省が特例的な措置を今年の1月1日から決めました。

これが「運用3号」です。

具体的には、遡って2年間の国民年金保険料を納めれば、それよりも前の期間についても、本来は納めなければならない期間だけど、納めたものとみなして(本来は1号で納付期間だけど、3号被保険者のままとして)、年金額にも反映させて救済しましょう!というものです。

まぁ・・・本当に理解不能な制度です。

じゃあ、真面目に3号→1号に切替手続をして、毎月々の年金保険料(毎月々約13,000円(現在は15,100円))を納めた人達はどうなるんだ!?という話。毎月支払っていくわけですから、みんな決して楽じゃない訳です。

知らなかった~!って、シラをきり、やり過ごしても救われるなら、誰も保険料は払いません。こんなことしてるから年金制度の信用は、またガタ落ちする。そもそも、払ってこなかった人たちを救済しましょう!と悠長なことを言っていられるほど、年金財源に余裕はないハズなのですが・・・。

誰がこんな「運用3号」なんて制度を考えたんだ!?

土曜に放送された「みのもんたのサタデーずばッと」でも議論されていましたが、その中で出演されていた廣瀬社会保険労務士が語られていた「運用3号の代替案」に、私も賛成です。

それは、まず…、

  • 2年あるいは10年しか遡れないという区切りは設けず、1号被保険者であった未加入期間のうち、遡って払えるところまでは保険料を納めるようにする。
  • 次に、払えずに残った期間については、カラ期間として処理し、受給資格期間(年金加入期間としてはカウントする)にはするけど、年金額には反映させない。

という取り扱いにしたらどうかということを話されていたと思います。とても全うな考え方だと思います。

また、

制度を知らない=救済する

という考え方が不自然だとも言っておられますね。

つまり、脱サラして自営業者になれば、市区町村で国民健康保険と国民年金への切替手続を一元的に処理しているのが一般的です。

「制度を知らないで不利益を被る人たちを救済」といっていますが、あえて国民健康保険証だけを受け取って、国民年金の方は故意に払わないできた人がいることも事実で、この人たちが大部分を占めているのではないか?この人たちを国民のお金を使って、あえて救済すべきなのか?

ということです。私もその通りだと思っています。

そこまで国民(主婦)は無知でしょうか。「運用3号」制度の取り扱いを決めた方々は、現場を知らないように感じます。市区町村では、「国保年金課」というような名称で一括して事務処理していることが多く、制度の周知はしているのです。病院にかかる際に保険証がないと困るから、保険証だけは受け取って、国民年金はまた払いま~す!といって手続しない人がいることも事実なんですね。

社会保障制度であるということを考慮しても、知らないで済んでしまうなら、それこそ法律はいらないし、法律社会そのものが崩壊します。今回の厚労省の決めた「運用3号」は、法律を無視した行政の逸脱行為だと言わざるを得ません。それも、こんな大切なことが通達運用・・・。

いずれにしても、保険料を払ってきた人と、払わなかった人を同じように取り扱うことは絶対におかしい。制度が成り立たなくなります。

もし、この運用3号を貫くのであれば、自営業者の専業主婦として、国民年金1号被保険者の期間中にキチンと納めた人たちに対し、これまでの保険料を一時金として返還すべきでしょう。

サラリーマンの妻(専業主婦)も、自営業者の妻(専業主婦)も変わらないのに、国民年金制度では別々に取り扱ってきた。区別する必要性もわからないから、国が申し訳なかったと謝り返金すべきでしょうね。

本来は利息もつくはずですが、国民に納得してもらって、保険料として払い込んだ分(元金)のみをそのまま各専業主婦に一時金として返金するのです。

そうでもしないと、どう考えても公平性は保たれない。

しかし、私のこの考え方は、極論です。

前述したように年金財源が限られている現時点では、到底実現することのできない現実的でない案であることは言うまでもありません。

となると、遡って納められる期間は設けず、保険料を納められるところまで納めて、納められない期間についてはカラ期間として取り扱うのが、一番皆が納得のいく結論に至ると思うのですが、皆さまはいかが考えられるでしょうか?

運用3号の取り扱いは、遅かれ早かれ、問題として取り上げられるのではないか?と思いましたが、早い段階で取り上げられて良かったと個人的には思っています。

既にこの運用3号の適用を受け始めている人もいます。早いところ、運用3号に代わる妥当な案を提示されることを切に願います。

最後にもう一度。

マジメにお金を払ってきた人と、制度知らない(忘れてた)といって、お金を払ってこなかった人を同じ土俵で議論しては、絶対にいけない!!と思います。


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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