モデル現役世代の所得代替率50%について

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<厚生年金>「現役世代の50%」受給開始直後のみ
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平成16年の厚生年金保険法改正時にはわかっていたことなのに、今頃になって問題視されはじめてきたようで、何か今更感が拭えません。

モデルとなる現役世代の所得代替率50%を確保するとされた平成16年改正当時には、あわせて次のようなことが決定されていたのです。

まず「保険料水準固定方式」を採用することです。
これで、入ってくる保険料財源は限られることになります。その上で、年金制度を維持するためには、出ていく年金支払いの「給付面」もあわせて抑制していかなければなりません。

そこで、マクロ経済スライドの発動です()。
65歳時点の新規裁定者には、賃金の上昇率に応じて年金額に反映させますが、その後の68歳以降既裁定者については、物価の上昇分しか年金額には反映させない仕組みとすることで、年金支払い額が膨れ上がらないようにしたのです。

しかし、原則的に賃金の上昇率と物価の上昇率では、賃金の伸びの方が上昇率が高くなります。にも関わらず、68歳既裁定者以降には物価スライド分しか適用しない訳ですから、年金の実質的価値というのは年々目減りしていく結果となるのです。

さらに、賃金スライドや物価スライドの率は上昇分がそのまま年金額に反映される訳ではありません。その前に「調整率」の存在があります。
平たく「調整率」を言えば、平均余命の伸びを抑制するために上昇分からマイナスする数値で、厚労省では約0.9という数値を規定しています。

したがって、1%物価上昇があったとしても、調整率0.9がマイナスされるため、年金額に反映されるのは0.1%という結果になり、ここでもまた、年金額の実質価値が目減りする要因でもある訳です。

結果、モデル現役世代の所得代替率50%水準というのは、年金受給時の話でしかないということになります。

しかし、だからといって社会のセーフティネットである年金制度を無くせ!という極論に私は持ち込むつもりはありません。ここで社会保障制度について書いてしまうと、論点がズレてしまうので割愛しますが、年金制度をはじめとする社会保障制度を無くしても、誰も得をしませんから…。

とはいえ、私を含めた若年層世代は、社会保障制度だけを頼りにしていては老後が危険です。社会保障制度を土台に据え置いて、プラス上乗せの自分自身の年金づくりを真剣に考えていかなければならないと言えます。

今は年金額を据え置いてきた1.7%分が解消されるまで物価スライド特例措置が採用されているために、マクロ経済スライドはまだ発動されていません。解消後のこれからの話になります。


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佐藤 正欣

佐藤 正欣

SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士。株式会社エンブレス 代表。専門は人事・労務。

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